群論授業日誌


10月5日

「群論」と「群論演習」のサポート(?)・ページです。
多くの方が、前期のベクトル解析も履修したことと思いますが、 授業本体(「群論」)と演習との関係は概ねベクトル解析のときと一緒です。
今回は、月曜日の講義の次の日に演習の時間となります。 記憶が新しいうちに練習するというのが意図したところではりますが、 講義以前の予備知識でお忘れのことは、さすがにその場での対応は難しいので、 講義と演習の間に予め補っておくという大前提はあります。
群論の内容については、追い追い学んでいくことになりますが、 一言で述べれば、対称性の数学、ということになるでしょう。 対称性を数学として如何にとらえるかが、そもそもの問題でもあります。
今日は、その動機付けとして、重要な3つの重要な実例をとりあげました。 時計算、多項式の変数の入れ替え、それと図形の対称性です。 これらに共通する何かを概念として取り出したものが「群」と呼ばれるもので、 来週は祝日のため、次回は2週間後となります。

教科書は、
http://sss.sci.ibaraki.ac.jp/teaching/group/gr2008.pdf
参考書は、
http://www.math.uwaterloo.ca/~mkamensk/teaching/336/lectures.pdf
http://www.math.kochi-u.ac.jp/docky/kogi/kogi2006_1/index.html
「集合」についての予備知識の確認のためには、
http://sss.sci.ibaraki.ac.jp/teaching/set/set2005.pdf

「群論」の進度予定表「群論演習」の進度予定表

群論演習の試験問題1です。 なお、解答作成に当たっては、TAの中嶋君の協力を得ました。 (2回目以降も同様の予定。)

10月19日

今日は、Arthur Cayley が導入した「群」の定義について解説しました。 群の例は、山のようにたくさんあるのですが、その中でも基本的なものが、 置換のつくる対称群、数の作る各種可換群、それと行列の作る群です。 この授業では、主として最初の2種類を扱っていきますが、これは決して行列群が重要ということではなく、 入門的な内容の扱いと「数学プログラム」のカリキュラム構成上の必要性という事情によります。

さて、さっそく出てきたのですが、写像についての基本事項、忘れている方が多いと思います。 是非、自主的に復習しておいて下さい。 大げさかも知れませんが、それこそが、大学で学ぶ意義でもあるのですから。 2年の後期、手取り足取りから脱する良い機会でもあります。

群の定義に関連して、「乗積表」というのがあるのですがこれについては、演習の時間で扱う予定です。 あまり本質的とも思えないので、本文には書いていませんが、 パズルみたいなところで慣れてもらおうという趣旨です。

群論演習の試験問題2です。

10月26日

群の実例を簡単に復習したあとで、多項式の対称性を再度取り上げ、 対称性の高低(大小?)について、これも復習しました。 対称性がもっとも高いのが対称式でその場合の群は、いわゆる対称群です。 それよりも対称性が劣ると、対称群の部分集合が特殊な形で出現しますが、 これが、部分群の典型的な例になっています。
部分群自体は、群構造を保存した部分集合という形で形式的な定義は終わりますが、 対称性を比較するという立場からは、後ほど説明する群作用に伴う固定部分群とう見方が 重要です。
部分群の定義の簡単な言い換えもしました。直接試験問題として問うことはしませんが、 試験にでるかどうかが重要ではありません。自ら納得する作業を怠りませぬよう。 最後に説明した直積群は、単純な操作ですが、群の大量生産を可能とするものでもあります。
次回の試験範囲ですが、群と部分群とします。とくに概念の定義と実例について復習しておいて下さい。

群論演習の試験問題3です。 逆行列の計算が怪しい人が結構いました。線型代数の本を用意してないのでしょうか。 「取りあえず、何か書いておけばいいや」といったことになっていないでしょうか。

11月2日

霜月である、というのは実は正しくない。陰暦だと、今日は9月16日、長月、秋の夜長。 しかし、木枯らしが吹き、季節は確実に移ろいつつある。 講義の方は、区切りの試験1である。 きわめて基本的な質問であったのだが、できはどうだっただろうか。
2年後期は、油断するとたるみがちになろうが、ここを乗り切ることが、大学時代の要点かも知れぬ。 何も勉強だけに限ることではない。緊張と緩和、偕楽園記。本多光太郎は、今が大切、といい、 来年のことは、鬼が笑うという。賽は投げられたか。吉凶は人事の外、自我の塔を築くのみ。

11月9日

群論は、ずーと登り調子の授業が続くわけだが、そろそろ息切れしてないだろうか。 前回の試験結果を掲示したので確認のこと。一問につき2点満点である。 基本は、2点または0点で、どちらか判断に迷ったら1点がつく。

さて、今日の坂道であるが、準同型である。準同形と書くことも多い。 まあ、意味は同じなので漢字は簡単な方がよいと思えば「形」を使えばよろしい。問題は、その内容である。
写像の性質であるので、まずは、写像の意味を復習しておこう。とくに全射・単射を。 次に2つの群の類似性を調べるとは、どういうことか。 そのためには、さまざまな群の特性を理解しておく必要があると知るべきである。

今回の群論演習の試験問題4である。 予想していたことであるが、出来は良くなかった。証明問題と言っても定義から簡単に分かることなのであるが、 (1)言葉の意味が分かっていない、(2)何が問題でどういう書き方をすべきか。 祭りのあとの試練や如何に。

11月16日

茨苑祭のあとの月曜日であったが、欠席者も少なかったようで、皆さん真面目ですねえ。 でも、大分お疲れの人もちらほら。
今日は、特殊な可換群である巡回群について一通り説明しました。 易しいと思っても、実際試験ともなると意外に点が取れないものです。 授業中でも強調したように、乗法群と加法群の記法の違いにご注意下さい。 他に、用語として位数というものが出てきました。これについてもいろいろな例で計算練習しておいて下さい。
次回(再来週)は、2回目の試験です。

群論演習の試験問題5である。

11月30日

2回目の試験である。このような問題でも点差がつくというところが面白哀しくもあるが、 ふと、何のためにこのようなことをしているのか、と気にし出すと、こちらは心寂しい。

今回の試験でほぼ半分過ぎたことになる。明日から12月、年の瀬。 もう来年のことを言っても鬼も興味がないかどうか。

「少人数クラス」という名の授業があるとは、知らなんだ。できることをできる範囲でするだけである。 当たり前のことではあるが、いまさらじたばたしてもしようがないという諦めというか、 開き直りである。

12月7日

今日から後半戦である。ハードな時間が続くことになろう。
まずは、群の作用。この概念は、極めて重要だと思うのだが、扱っている教科書が少なくかつその場合も扱いが軽い、軽すぎる。 理由は、想像つくのだが、敢えて書かない。作用を考えない群なんて、と思えるようになることが目標でもある。
作用に伴って出現する、固定部分群、軌道の考えが、これまた大事。しっかり復習して欲しい。 と、書いても放っておくとしないのだろうなあ。学生は弧度もですか、大学は尻を叩くとこですか。 おっと、Anthy は、すごい漢字変換をしてくれる。「すうりけん」と打ってごらん、何が出るか。

今月は、変則的な授業割り当てになっていて、24日が振替月曜日ということで、試験を予定している。ご注意あれ。

もうひとつ、例年のことながら、明日(12月8日)は何の日であろうか。はて、だれかの命日だったか、天国への道、知るすべは、 対偶命題。

群論演習6の試験問題である。

12月14日

今日は、作用の第二段、軌道分解と軌道空間である。ごく単純なことなのだが、軌道と軌道空間、区別がついただろうか。 大事な例を繰り返し取り上げた。予定どおり来週の木曜日は、試験。第一級の試験範囲なので、復習に努められんことを。
ノートを読み返すだけでは、だめで、必ず手を動かしてノートを伏せて書いてみることである。 余裕がある人は、右作用も練習しておこう。左右どちらでもできるようにしておく。 貴重な鍛錬の機会を逃すべきでない。

軌道空間にあっては、「集合入門」で学んだ同値関係と同値類についての復習も勧める。 講義の資料さえ手元に用意していない不心得者は論外としても、ただ持っているだけでは意味がない。 熟読玩味、行間をも読むべし。

群論演習試験問題7の解答です。

12月21日

今日は、剰余類と Lagrange の定理について説明しました。 まずは、具体例で検証することが大切ですが、それに留まらず、 より抽象度の高い問題にも挑戦してもらいたいものです。 教えてくれるのを待っているといった状態をいつまでも続けていてはいけません。

今週は、変則的な振替月曜日が入っていて週2回の授業があります。 そのうちの一つは、3回目の試験です。作用・軌道・固定部分群・剰余類。テキストを読み返し、 例題・練習問題で手を動かし頭を働かせ、朝三暮四の猿ではないことを証明したいものです。

明日は冬至、寒枯れの街路に乾いた光満ち、また一年が過ぎるのだなあ。

群論演習試験問題8の解答です。

12月24日

曜日をこのように恣意的にいじるのは罪悪に等しくあれど、大学の方針であればこれもやむを得ぬ。 3回目の試験であったのだが、 まずまずの出来であろうか。軌道の個数=軌道空間の大きさを問うたのだが、 その意味もわからず、軌道の大きさあるいは、全体集合の大きさで事足れりという態度は、悲しい。 もう少し、厳しく律すべきか、しかし手遅れか、水戸の暮れ、うーむ。

1月7日

共役作用とその軌道である共役類をまず取り上げました。この授業で扱う作用はこれでおしまいです。 というより、授業そのものがあと1・2回の命かな。早いものです。日も長くなりはじめましたし。 さて、共役作用、定義を聞いただけではその有難みはわからないかも知れません。 群論の入門としては必須でないかも知れませんが、 少しでも群の構造とかを問題にするとたちどころに必要になります。 具体例としては、対称群の場合に置換の型と関連付けておきます。 こちらは、組合せ計算も懐かしきかな。

正規部分群は、共役作用のついでに導入しましたが、単刀直入の方がよかったでしょうか。 これは、次回最終回の話題である商群への準備です。たくさんとは言いません。 少しは復習しておかれんことを。

群論演習試験問題9の解答。やはりできは良くなかったのだが、 おまけかな。

1月18日

早いもので、実質的には今日で授業はお終いです。 最後の方は、一般的な話だけになってしまい残念ですが、まあ、潮時でもあるでしょう。 群論なんていうのは、自分で勉強すれば良いのであって、と言ってしまっては身も蓋もない話ですが、 真実でもあります。数学の大抵の授業がそう。もっと別の形態が考えられないものか。 一緒に考え遊ぶ時間が持てれば良いのですが。何のために数学を勉強するのか。学校の先生になるため、 就職の箔?論理的思考力?そういったものは世過ぎの方便とはいわないまでも、本当じゃない。 説明責任という。生きるのに説明なんかいるものか。それに近い感覚。この世におけるしばしの逸楽。 労を惜しんでは歓もなし。ささやかなる収穫のとき、ありやなしや。

忘れるところでした。来週は最終4回目の試験です。試験範囲は、過去2回分の授業。

群論演習試験問題10の解答

1月25日

今日は、4回目(最終)の試験をしました。概ねできていたように思います。 まあ、範囲をこれだけ限定したのだから当然かもしれませんが。 来週も授業は予定されているのですが、一部の指名された人だけを対象に試験を行います。 掲示にご注意ください。

群論演習も、同様の措置をとります。ということで、今日(1月26日)のお話をもって、 実質的な終了となします。苦しい思いはされたでしょうか。
お互いに不満点はあれど、道を進むのみ。死んだ登山家の言葉、「生きることは冒険だよ」と。 さて、遠き都へ帰ろうか。空黙を頼りに。


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