フーリエ解析授業日誌



成績の統計的データです。

A --- 結構わかった人(24人)
B --- ある程度わかった人 (32人)
C --- 少しわかった人 (45人)
D --- 結果を出せなかった人(18人)
/ --- あきらめた人(14人)


10月03日

フーリエ解析は、常微分方手式・複素関数とならんで、応用解析学の 「御三家」を成します。 大学の授業でも、数学・物理から工学まで広い範囲の場所で関連する 講義が提供されていますが、 「何に使うか」の立場の違いにより、 数学者・物理学者・工学関係者三様の教科書が使われているようです。

数学的に厳密なことを言えば、なかなか微妙なところもあるのですが、 まあ、直感的に使える程度のことは、それほど難しいわけでもなく、 硬軟とりまぜて様々な本が出版されています。

この授業は、入門の入門ということで、 ごく簡単な内容に限定し、それでも、フーリエ解析についてのイメージが 得られるように心がけてみます。

参考書として、

を挙げておきますが、他にも良い本は沢山あります。 最初は、図書館・本屋などで見てみて、気に入ったら購入すると良いでしょう。

授業は、どれか特定の本に従って、ということにはならない予定なので、 自習用に、講義ノートを随時公開していきます。 これを教科書のかわりに使ってください。

10月10日

今日は、あとで必要になる内積(空間)について、線型代数の復習も 多少兼ねて話しました。

線型代数は、単なる行列計算に留まらず、いろいろと汎用性のあるもので、 すでに(常)微分方程式の授業でそういった一端は経験済みと思いますが、 フーリエ解析においては、線型代数の中でも内積の考えが重要な役割を演じます。 そういった際の内積は、通常幾何学的な意味の元に導入されるものに比べて、 かなり抽象度が高く、関数の長さとか、関数の間の「角度」といった、 「抽象の直感」が必要になってきます。

まあ、最初のうちは、計算方法の習得に終始するのも悪くはないのですが、 個々の「木」だけではなく「森」全体を鑑賞するためにも、 少しは経験しておいて損はないでしょう。
(fourier12.ps, fourier12.pdf

10月17日

今日は、内積の復習とかを丁寧にしたので、 あまり進まなかった(進めなかった)のですが、 如何でしたか。

線型代数の基本(うちの授業では、(基礎)行列代数と言ってますが)は、 是非、授業で使った本とかで復習しておいて下さい。 内積と正規直交系(基底)のあたりを重点的に。

普通の幾何学的ベクトルの時は、単なるピタゴラスの定理ですが、 これを関数(のベクトル)に使うと、いろいろ役に立つ不等式とか 出てきます。

今日の最後は、その不等式の素になる等式を示しました。 (不等式の素は等式、という意見あり。) 三角関数と複素指数関数の間の関係ともども、よく見ておいてください。

試験のお知らせです。 11月7日(木) に1回目の試験をします。試験範囲は、来週授業で説明するところまでです。

10月24日

今日もゆっくり説明をしていたら、 予定のフーリエ級数の計算例までたどり着けませんでした。 もう少し、スピードアップを図らねば。

「高周波平均の公式」と書いたものは、通常、 Riemann-Lebesgue の補題と呼ばれているものです。 電気工学(でいいのかな)的には、 AM変調(amplitude modulation)を単純に積分するとどうなるかという式なので、 あえて、違う呼び方をして見ました。
これで、意味は明らかだと思いますが、「証明」となると、 やはり、何らかの工夫が必要で、ここでは、 内積の不等式(これも、普通、 Bessel の不等式と呼ばれている) を使って説明しました。 証明を不審に思うよりは、抽象ベクトルの威力を感じ取ってください。
ついでに書くと、このあたりの見方は、 量子力学の理論形式と密接に関係しています。 こちらの方も、是非勉強してみてください。

講義ノートの方は、講義に先立ってこのページに載せていきますので、 それを予習とかに活用してください。
授業では、できるだけノートをとらなくても、いいようにしたいのですが、 どうでしょうか。 黒板に書く内容は、「絵」を除いて、そちらを見れば復元できるはずなので、 口で説明する部分が、授業としての主要部分となるようにしたいと思います。

来週は、授業は休みで、 その代り(?)次の11月7日に1回目の試験を行います。
試験範囲は、(1)オイラーの公式と(2)周期関数の周期積分、 とします。複素関数の復習も兼ねて練習しておいて下さい。

あと、メールのよる質問もどうぞ。

11月7日

フーリエ係数の計算例としては、簡単な不定積分を知っていれば、 大抵の場合、事足りるのですが、いかがでしょうか。 「フーリエ解析」の授業だからといって、微積分と線型代数の本を 無視しないことです。つねに手元において、面倒がらずに、 復習(場合によっては、補習)にこれ努めましょう。 (その意味で、微積分と線型代数は良い本を選ぶ必要があります。) 質問は、その後がいいかな?

今日は1回目の試験でもありました。
(fatest1.ps, fatest1.pdf
周期積分を出すつもりでしたが、その前の段階の、 複素関数の不定積分の問題にしました。 これを周期積分の問題に作りかえても良かったのですが、 これについては、次回の試験にまわすことにします。 周期積分の計算は、フーリエ係数の計算そのものなので。

かぜが流行っているようです。 君子危きに近寄らず?講義ノートの追加です。
(fourier34.ps, fourier34.pdf

11月14日

今日は、フーリエ級数の収束性の話題の第一段として、ポアッソン核による 正則化をやりました。

あいかわらず、ゆっくりやっているので、中々進みませんが、 これでも「早い」とお思いの方、 ゼノンのパラドックというのをご存知でしょうか。 ある程度のスピードは、亀の歩みでも必要です。 目標は少し上の方に置いて、それに向かって歩きつづけましょう。

次回までに「要所の」計算を復習しておいて下さい。 今回の場合は、(複素数の)等比級数と、 ポアッソン核の関数の性質がそれです。 受講者の人数が多いので、 なかなか演習的なものができないのがつらいところですが、 やってみて不明な点は遠慮無く質問してください。

試験の結果については、もうしばらくお待ち下さい。

11月21日

今日は、Weierstrass の多項式近似定理といわれるものを証明(説明?)して、 その応用として、いわゆる Parseval の等式を導きました。
フーリエ級数の内積が関係する部分は、このように非常にすっきりしていて、 「お手軽」ではあります。
それでも、上手に使ってやるととても強力で、 面白い等式とかがぞろぞろ出てきます。

授業では、最も簡単な場合を計算してみましたが、他のいろいろな 関数で「稽古」してみてください。

次回の試験(12月5日予定)の、第一級の出題範囲です。
(fourier5.ps, fourier5.pdf

11月28日

フーリエ級数がもとの関数を表すかどうかについては、 古くから様々な研究があります。
有名なところでは、 Dirichlet (ディリクレ)の判定条件というものがありますが、 個々の値での収束性は、それ程必要ないかも知れません。
いわゆる二乗平均収束で見る限り、話しはすっきりしてますし、 必要に応じて、それを利用することで、かなりの収束性を導くことも できます。
いずれにせよ、使う立場からは、二次的な話題のはずなので、 授業では、ごくあっさりと、それでも、少しは数学的な要点が見えるように、 説明してみました。

実際には、理屈以上に計算の練習が、初習者には大事で、 次回の試験も、そういった、計算練習的な問題となるでしょう。 内積の公式とフーリエ級数展開のあたりを具体的に復習してみて下さい。

悪い風邪が流行っているようです。 (実は、私もやられて、今日の授業は、「手抜き」したのでした。) 用心、用心。fourier5 の間違いの修正は、しんどいから、あとで。

12月5日

連日の会議で、まだ採点が終わっていませんが、 少しだけコメントを。

今回の試験は、計算がいつもより多かったのですが、 結構できてました。
ただし、周期関数が連続になる条件のところで失敗している人や、 相変わらず計算だけで説明の(ほとんど)ない答案もありました。 また、n=0 の場合を別個に処理していないあわて者も散見しました。 (そこまで、まねをしなくても。)

もっと失礼なのは、まったく同じ間違いを寸分違わず書いているのが 何人か見つかり、この「論理的な帰結」をどう処理するか検討中です。
目先だけごまかしても早晩、正体がばれるものなのですが、 残念ですねえ。

お約束の品です。 (fatest2.ps, fatest2.pdf

12月12日

事情があったとは言え、授業時間が短縮になってしまい、 申し訳ありませんでした。

もう今年もあと1週の授業になってしまいました。 (闇夜に向かって突進しているような感じもします。 縁起でもない?)

さて、今日は、フーリエ変換の話、第一段です。 フーリエ級数から、簡単なスケール変換をして書きなおして、 さらに簡単な極限を取るだけで、いろいろな公式を導いていきます。 まずは、フーリエ変換を導出する説明と、フーリエ逆変換を、 直感的な方法で出してみました。 授業後に質問があったように、 細かいところは、いいかげんな説明だったのですが、 まずは、何ができて、どういうメリットがあるのかを 知ってもらいたいためです。 数学は厳密を旨とするのですが、 その発展のしかたは、意外と直線的ではなかったりします。 取り合えずいろいろ使ってみて、その不具合が徐々に認識され、 その結果、厳密な扱いが模索されるという歴史もあります。
「気軽に考える。しかししつこく考える。」
のがよさそうです。
来週は、内積に関連したフーリエ変換の公式を導いてから、 いくつかの大事な計算例をやってみます。
年が明けた最初の授業時間は、3回目の試験を予定しています。

追加の講義ノートです。間違いがあったら、教えてください。 前回の講義ノートも修正したものと代えておきました。
(fourier6.ps, fourier6.pdf

12月19日

さて、今年もこれが最後の授業となりました。
坂道をころがり落ちるように、時間が過ぎていきます。 行きつく先は、はっきりしているのですが、人生一度の経験(?)。

今日は、先週の続きとして、 フーリエ変換の内積が関係する公式を説明しました。
線型代数的に解釈すれば、 フーリエ変換とは、4回施すともとに戻るユニタリー変換になっている、 というのがその内容です。
これの様々な解釈が役に立つのですが、図書館で 物理の本とか、信号理論の本とか見てください。

こういう、線型代数的な部分は、比較的簡単なのですが、 フーリエ変換の収束に関連する部分は、とても奥が深く、 測度論とか複素解析学とかが妖しく交錯してきます。

そういった微妙な問題も面白いのですが、 一方でまた、 デルタ関数にまつわる解釈とかも、怪しげで楽しくもあります。 これについては、時間の隙間に少し話してみたいのですが、 取り合えず、次回は、試験を行います。
フーリエ変換の定義と基本的な公式のあたりを復習しておいて下さい。 計算練習としては、 ガウス型関数のフーリエ変換をとくに見なおしておいてください。

(来年は年男だって、恐ろしい。)それでは、よいお年を。

1月9日

今日は、フーリエ変換と逆変換の復習をしたあとで、3回目の試験をしました。 (fatest3.ps, fatest3.pdf

内容は、基本的なものだったのですが、「稽古不足」のためか、 結果は今一つの感じでした。

授業での計算練習が少なかった、ということかも知れませんが、 「指示してくれないから勉強できない」という意識だけは、 変えましょう。
「努力したのに、報われない」ということであれば、 相談に応じますので、office hour (木曜8時ー9時!)にでもどうぞ。
少数でしたが、高校レベルの理解に問題がある人もいました。 こちらも、どうぞ。 (そのままにしておいては、「一生の不覚」の恐れあり。)

ということで、試験問題については次回の授業の中で、 少し解説することにします。 (その結果、当初の目標まで到達できなくなるかも知れませんが。)

1月17日

今日は、試験3の解説をした後で, 直接試験には関係しないことですが、フーリエ変換を考える上で役に立つ Dirac の delta 関数の解説を行いました。

これは、もともと、物理学者の P.A.M. Dirac が、量子力学の定式化の 過程で導入したものですが、ヒルベルト空間の形式的な議論だけでなく、 微分方程式の議論をする上でも重要な位置を占める概念です。
ただし、数学的に「キッチリ』やるのは、結構大変で、 それだけで、大層な本がいくらも出版されているくらいですが、 上手に使ってやると、 公式の記憶術としても活用できる便利なものです。

授業での説明は、ほとんど「お話」程度でしたが、 是非,本とかに当って、詳しく調べてみてください。

来週は、フーリエ変換の応用として定番の微分方程式の解の表示法を 解説する予定です。時間があれば、計算練習も少しはしてみたいのですが、 これで、この授業の「講義」の部分は終了の予定です。
最終、4回目の試験は、2月6日にします。

1月24日

早いもので、この授業も、今日で説明するのが最後になりました。

フーリエ変換(展開)の応用について何かふれておきたかったので、 熱方程式の解の初期値問題の解法を取り上げてみました。
まあ、これは基本中の基本でもあるので、 あえて「応用」というものではないのですが、歴史的にも、理論的にも、 そして応用の上でも大事な例として、この講義の最後の話題としました。

授業で説明したように、「解」が、フーリエ変換を利用することで、 「具体的」に書けるといった利用方法は、いろいろな本に取り上げられています。 今後の必要に応じて研究してみてください。
(fourier78.ps, fourier78.pdf

次回の授業は、予告通り、2月6日(最終試験)です。
試験範囲は、熱方程式の解法と関連するフーリエ変換の計算テクニック、 についてです。

2月6日

今日の試験結果も含めた集計については、 採点できしだい(2月10日頃に)掲示しますので、 確認して下さい。


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