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次に示すのが, 「バナッハタルスキーの定理」の証明において,
重要
な概念である分割合同の定義である.
定義 3.1
となる
が存在するとき,
に
G-合同であるといい,
と表す.
となるように
を
と
分割できる, すなわち
であるとき,
と
は
G-分割合同である
といい,
または,
を省略して
と表す.
注意 3.1
上で定義された分割合同は, 図形の“周辺部分”を含めて, 重なり
があってはならない. 図形の
“常識的な分割合同”は, 今の場合, 分割合同に
なっていない. なぜなら, 対角線が二重になっているから
である. その意味で,
「バナッハ・タルスキーのパラドックス」の証明
に現れる分割合同は, 厳しい
意味での分割合同になっている.
注意 3.2
定義
において,
がユークリッド
空間
,
が
ユークリッド
空間
内の運動群
の場合,
-合同
は,いわゆる通常の
合同と
同じである.
半径の異なる
つの球体が,
常に, ユークリッド空間
内の運動群について分割合同で
あるという主張が「バナッハ・タルスキーの定理」の正確な内容である。
補題 3.1
“
”は,
の部分集合族の上の同値関係である.
証明
について,
に
の単位元
をかけると
となる
ので
である.
よって, 関係
は反射律を
満たす.
につい
て,
ならば, ある
によって,
となる. 両辺に
の逆元
をかけると
となるので
である.
よって, 関係
は対称律を
満たす.
について,
ならば, ある
によって
となる. したがって,
となるので
である.
よって, 関係
は推移律を
満たす.
補題 3.2
“
”は,
の部分集合族の上の同値関係である.
証明
について,
とおく.
各
に群
における単位元
をかけると,
すべての
につい
て
となるので
と表すことができる. したがっ
て,
であることは明らか.
よって, 関係
は反射律を満たす.
に
ついて,
であるならば,
となる.
の両辺に
の逆元
をかけると
となる. したがって,
となるので
である.
よって, 関係
は対称律を満たす.
について,
ならば
を
示す. まず,
なので
と表すことができる. また,
なので
と表すことができる.
と
おけば, 両辺に
をかけることによって
となる. また,
とおけば
であるので
となる. したがって,
である.
よって, 関係
は推移律を満たす.
定義 3.2
-空間
の部分集合
に対して,
が
のある部分集合と
-分割合同であるとき,
と表す.
つまり,
となる
が存在する.
注意 3.3
明らかに,
ならば
である.
注意 3.4
は, 半順序関係である.
補題 3.3
分割合同に関して, 次の2つの性質が成り立つ.
- であるとき, 全単射
で, 任意の に対し
て,
が成り立つような
ものが存在する.
-
.
証明
(i) -分割合同であることより, を
それぞれ,
と分割して,
とできる. そこで, 全
単射
を
に
よって定める.
に対し,
と分割でき,
となるので,
となる. よって,
である.
(ii) 明らかである.
定理 3.1
ベルンシュタインの定理
を集合
に作用する群とし,
と
する. このとき,
が成り立つ.
証明
分割合同の性質i,iiを使う.
かつより,
かつ
,
かつ
であるようなが存在する. そこで,
で補題6.1 iの性質をもつものがある.
とし,
と定め,
とおく。
であるから、補題6.1(i)の性質より、
である。
次に、
すなわち,
が
成立する.
よって, 補題6.1(i)の性質より
.
最後に、補題6.1 iiを使って、
となる。
注意 3.5
“ベルンシュタインの定理”というと, 一般的には次のものをいう.
「 集合
について,
から
への
単射および
から
への単射がともに存在すれば,
と
は
濃度が等しい 」
定理
で
の作用を「自明」な
ものとして取れば, 通常のベルンシュタインの定理に帰着する. この
意味で, 定理
はベルンシュタインの定理
の拡張になっている.
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Yamagami Shigeru
平成15年2月14日