実数論授業日誌


成績の統計的データです。

A+ --- かなりわかった人(3人)
A --- 結構わかった人(6人)
B --- ある程度わかった人 (9人)
C --- 少しわかった人 (18人)
D --- 危なかった人(15人)
E --- 結果を出せなかった人(9人)
/ --- あきらめた人  (5人)
合計65人


4月05日

授業の資料進度予定表を用意しました。 情報処理センターなどの端末から閲覧・印刷してご利用ください。

「実数論」とはかなり大げさな科目名ですが、通常「イプシロン・デルタ」で、 業界内では通じる内容の授業です。微積分の基礎といっても良いでしょう。 基礎とはいいながら、結構手強かったりします。 これは、本来、多くの具体的な経験を積んだ後で学ぶべきものなのですが、 何故か今の時期になってしまっています。授業の中でもいいましたが、 卒業までに理解できれば十分のような気もします。
過年度生用の履修案内から、この授業についての記載が洩れていたようです。 お詫びいたします。履修申告の際の時間割コードはは後程掲示されることと 思います。(「S1111」でないらしい。)

今日は、歴史的背景を概観したあとで、 論理記号(All, Exist)の復習をしたのち、 集合の有界性について説明しました。 復習しておいて下さい。

4月12日

有界性の復習をし、ついでに数列の有界性についても述べました。 続いて、実数の連続性(の一つの言い方)として区間縮小法の原理、 それを使った Bolzano の2分割法によって、 上限・下限の存在を確かめました。
一歩一歩、有無をいわさず進んでいくのが特徴です。 こういったところは、私個人は楽しくないのですが、 皆さんはいかがだったでしょうか。 これからこういったものがしばらく続きます。 まあ何毎も経験です。
上下限のついでに、上極限・下極限(舌を噛みますな)を導入し、 数列の収束性の言い替えまで説明しました。

次回は、コーシー列の定義と実数の構成について少し触れて、 定積分の話に入ります。

試験のお知らせです。予定どおり、 4月26日に1回目の試験です。

4月19日

今日は、コーシー列の定義と 有界数列は収束する部分列を含むという Bolzano の定理の後で、 Cantor による実数の構成方法を簡単に紹介しました。 Dedekind による実数の構成については、
http://www.math.nara-wu.ac.jp/personal/miyatake/kaiseki-1.pdf
が参考になるかも知れません。

本日のメインディッシュは、コーシーによる定積分の存在定理でした。

この授業全体について言えることですが、 何か技術的なことを身につけて使えるようにする、 といった類のものではありません。 先達の残した跡をたどるにしても、 結果だけを見てもしようがなく、芭蕉も言っているように、 先人の求めようとした心の追体験を目指すべきです。
ということで、授業の資料をよく読むこと、 本で調べて考えるといったことが本質的に重要です。 悪戦苦闘のあげく、どうにも困ったときには、相談に訪れてみて下さい。 いろいろトライせずに聞いてしまうのは、もったいない限りです。

次回の試験範囲ですが、 上界、下界、有界の意味を説明できるようにしておきましょう。 上限・下限が具体的に計算できるように練習しておきましょう。 そのためには、上極限と下極限までの復習を勧めます。

4月26日

定積分の存在に関するコーシーの分析の補足説明をしました。 見掛けの表式の複雑さに惑わされなければ、実は簡単なことを述べているのに 過ぎないのでした。

ついで、上限・下限、上極限・下極限の復習をして 試験1をしました。 試験時間が予定よりも短くなりましたが、ヒントを沢山差し上げたので、 満点続出と思いきや、なかなか大変なことになっているようで、 頭が痛い。

5月10日

連休が明けましたが、梅雨のような天気になってますね。
さて、今日は実質的に最初の難関になるでしょう。 いわゆるイプシロン・デルタとの遭遇です。
前回の積分の話の方が難易度は高いのですが、難しい分だけ 諦めよく勉強をしない、ということになっています。 残念ながら。
一方、今日でてきた数列の収束の「定義」は、今後さまざまな形で 皆さんはつき合っていくことになります。 取り掛かりは気楽に、しかししつこく(繰り返し)やってみて下さい。 2年後・3年後に光明が見えるかも知れません。

いたずらに流行を追うのではなく、石の上にも三年の覚悟で地道な独自の 基礎研究をつづけ、ある分野のナンバーワンではなく、 世界のオンリーワンになったものが、最後に生き残る可能性が高い。
--------一松信の言葉
(「数学とコンピュータ」、共立出版、1995、のはしがきより)

試験結果については、もう少しお待ち下さい。

5月17日

数列の極限の「定義」の続きとして、 関数の連続性(の言い替え)について説明しました。
この、数列を使わない連続性の言い替えは、微分係数の定義などの際にも 威力を発揮しますが、具体的な計算技術というものではないので、 いま一つありがた味がわかないかも知れません。

そういった「醒めた」人のために、カントル関数について説明しました。 別名「悪魔の階段」と呼ばれるものですが、究極のバリアフリー階段、 ともいえるでしょう。他にも、こういった「病的な」例はあって、 連続関数と言えども侮れません。
次回の試験の準備としては、前回の数列の極限で扱った例題とか 練習問題を復習しておいて下さい。

5月24日

今日は、2回目の復習と試験2をし ました。
説明の問題では、復習のところでサービスしておいたつもりだった のですが、苦労している(書くのが苦手な)人が多かったようです。 数学なんだから計算が合っていればいい、という考えではそもそも 意味のある計算はできていないものです。 苦労して考えたことは上手に表現できるようお稽古をしましょう。 その効果がすぐには見えなくても続けていけば、普通に書けるようには なります。

うーむ、何の授業であったか。 復習のところで説明した、「不等式で押さえる」という手法は、 非常に基本的なもので、これが楽に使えるように、こちらも練習を重ねて 欲しいもののひとつです。

5月31日

おまたせしました。2回の試験結果を掲示しておきました。 常の如く、4回の合計で6点以上が合格です。 前回の試験についての講評も簡単ですが説明しました。

定積分その2として、連続関数の一様連続性について確認しました。 それに関連して、定積分の性質を列挙して、皆さんの自主学習に委ねました。 こう言った「手続き」の部分が、人の説明を聞いてもだめで、 自らの手で納得するより他にしようがありません。

試験の予告です。3回目の試験は6月14日。 今日のところは、最後に提示した練習問題をやっておいて下さい。

細胞を目覚めさせる「薬」でもあると良いのだが。 こういう書き方をすると、お上がチェックして定期的に訪問するように なるのだろうか。

6月7日

連続関数の性質と題して、最大値の定理と中間値の定理を確かめました。
最大値の定理の応用(?)として、平均値の定理も説明しましたが、 これがどうして高校数学に残っているのか不思議でなりません。 積分の定義をいじるよりは、平均値の定理を削った方がはるかに 教育的に思えるのですが、先入観のなせることでしょうか。

次回の「試験対策」として課題を2つほど(反例作りと解(根)の存在) 挙げておきました。 ぜひ、取り組んでみて下さい。

暑いようなそうでないような変な天気です。 皆さん、風邪にご注意あれ。

6月14日

梅雨入りしましたね。3回めの試験です。

6月21日

沖縄では明けたようですが、梅雨本番といったところでしょうか。 淀んだ熱のおびた湿気を感じます。紫陽花でも愛でますか。 この辺では保和苑が有名ですが、偕楽園の竹林のあたりも良さそうです。

3回めの試験結果を掲示しました。それなりに努力の跡も認められましたが、 詰めの甘い、日銀総裁のような人が目立ちました。

今日からは、終盤戦、級数のお話です。 できるだけ具体的な例とセットで説明したいと思います。 まずは、さまざまな級数の公式を挙げました。
メルカトール級数とライプニッツ級数について調べた後で、 級数には、収束性の観点から、良い級数と悪い級数の二種類があることを 認識していただきました。

次回は、この区別とそれから導かれる便利な性質について解説します。

鉄砲丼2がどうのこうのと喧しいですが、前回の似たような騒ぎの際に、 右往左往のお上が某国の「防衛構想」に乗せられて、 結構なお金を支払っていることは、なぜか報道されず、 民も忘れているのかどうか、 「システムを検証する絶好のチャンスである、どこからでもかかってきなさい」 とは言えないのでしょうね、朝貢国としては。

6月28日

梅雨も盛り、といっていいのかどうか、九州の方で被害が出ているようですが、 毎年、この時期はうっとうしいですね。 個人的な季節感としては、本因坊戦なのですが、某新聞社には、 サッカーの方が重要であるらしい。

といった雑念はさておき、 級数の絶対収束と条件収束です。 この「絶対収束」という言い方には、少なからぬ違和感を感じていて、 「絶対収束する級数は、収束する」 といわれても、絶対に起こることだったら、起こって当り前、 なにを寝ぼけておるのか、というのが正常な感覚ではないでしょうか。

さて、絶対収束でわすれてはいけないのが、総和可能性ですが、 この説明が何故か中途半端というか、不十分の本(微積分の本です)が多すぎの ように思えます。「積級数」とかの特殊形に拘り過ぎるのは考え物で、 えいやーっ、とすべてを足し上げることができる、 といった認識の方がはるかに重要でしょう。

次回の試験範囲は、この絶対収束と条件収束についてです。 今日の例題を中心によく復習しておいて下さい。

7月5日

級数についての復習と補足(優級数)の後で、 4回めの試験をしました。

7月12日

今日は、前回の試験問題の解説をした後で、 関数列の極限について説明しました。 続いて、関数項級数に言及し、 優級数を使った、一様収束性についての判定条件、 積分と極限の順序交換までしました。

具体的な計算についての経験が乏しいと厳しいかも知れません。 最後のコーシー列に関する一様収束性の説明は、 大分端折った形になってしまいましたが、 もう、ここら辺りまでたどり着けば、あとは自分が先頭に立って道(藪?)を 歩いてみましょう。

試験結果については、もうしばらくお待ち下さい。

7月19日

梅雨の寒さは何を暗示しているような。 夏の夜の逍遥も、叶わないのでしょうか。

今日で最後となりました。この授業に続く内容を 簡単に見た後で、授業アンケートを実施しました。 最終成績を掲示してあります。 ご確認下さい。そして、はかなき夢を、合掌。


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