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一般の行列式


$ n$ 次の行列式を、$ n-1$ 次の行列式を使って帰納的に、

$\displaystyle \begin{vmatrix}
a_{11} & \cdots & a_{1j} & \cdots & a_{1n}\\
a_{...
...& \cdots & \vdots\\
a_{n1} & \cdots & [a_{nj}] & \cdots & a_{nn}
\end{vmatrix}$

と定義する。ただし、 $ [a_{2j}],\dots,[a_{nj}]$ とあるのはそこの部分の削除を意味する。 (1行に関する展開。)

行列式のサイズに関する帰納法で(2次の行列式の性質から 3次の行列式の性質を導いたのと同じ方法で)、 次の性質を確かめることができる。

  1. 線型性: 行列式 $ \det(\overrightarrow{a}_1,\cdots,\overrightarrow{a}_n)$ は各ベクトルについて1次式の性質を持つ。
  2. 交代性: $ \overrightarrow{a}_1,\cdots,\overrightarrow{a}_n$ のうちの 2つのベクトルを入れ替えると行列式の値は符号が反対になる。
  3. 規格化条件:

    $\displaystyle \begin{vmatrix}
1 & 0 & \cdots & 0\\
0 & 1 & \cdots & 0\\
\vdots & \vdots &\ddots & \vdots\\
0 & 0 & \cdots & 1
\end{vmatrix}
= 1.
$

たとえば、 $ {\overrightarrow a}_k$ $ {\overrightarrow a}_l$ ($ k < l$) の入れ換えについての 交代性を示すのであれば、展開式(定義式)の和の部分を

$\displaystyle \sum_{j\not= k, j \not= l} (-1)^{j+1} a_{1j} \begin{vmatrix}a_{21...
... & \cdots & \vdots\\ a_{n1} & \cdots & [a_{nj}] & \cdots & a_{nn} \end{vmatrix}$    
$\displaystyle + (-1)^{k+1} a_{1k} \begin{vmatrix}a_{21} & \cdots & [a_{2k}] & \...
... & \cdots & \vdots\\ a_{n1} & \cdots & [a_{nl}] & \cdots & a_{nn} \end{vmatrix}$    

といった分け方にして帰納法の仮定を使う。 あるいは、線型性を確かめたあとで、2つの列を等しいした場合に 値が 0 になることを示す。

問 9   $ n=4$ のときに上の3つの性質を確かめよ。

問 10   行列式の性質(列に関する線型性と交代性)から、 連立一次方程式の解の公式 (Cramer's rule)を導け。 (クラメールの公式そのものは、歴史的価値を除いて、 それほど重要なものではない。)


$ m\times n$ 行列 $ A = (a_{ij})_{1\leq i\leq m, 1\leq j \leq n}$転置行列 (transposed matrix) $ \,{}^tA$ $ {}^tA = (a_{ji})$ で定める。 (転置行列は、しばしば、$ A^t$ という書き方もするが、 これだと行列 $ A$$ t$ 乗と紛らわしい。)

$\displaystyle A =
\begin{pmatrix}
a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n}\\
a_{21} ...
...& \vdots & \ddots & \vdots\\
a_{1n} & a_{2n} & \cdots & a_{mn}
\end{pmatrix}.
$

成分の縦横の位置関係に注意。

行列式の性質として基本的なものが次の定理である。 (証明については、節を改めて述べる。)


定理 3.1    
  1. 線型性・交代性は行ベクトルについても成り立つ。
  2. 行に関する展開式、列に関する展開式が成り立つ。
  3. 転置行列の行列式は元の行列式に等しい。
  4. 行列の積についての性質、積の行列式は行列式の積に等しい。 (まるで、呪文ですな。数学(科学も?)を式抜きで理解することは困難。 「数式なしの何とか」というのはまやかしである。)

系 3.2    
  1. 行列式のなかに同じ行または列があれば、行列式の値は 0。
  2. ある行(列)の定数倍を他の行(列)に加えても行列式の値は変化しない。


例題 3.3   4行4列の計算例


例題 3.4   三角行列の行列式。

$\displaystyle \begin{vmatrix}
a_{11} & a_{12} & a_{13} & \dots\\
0 & a_{22} & ...
...
\vdots & \vdots & \vdots & \ddots
\end{vmatrix}= a_{11} a_{22} \dots a_{nn}.
$

問 11   いろいろな4行4列の行列について、その行列式の計算を実行せよ。

問 12   $ n\times n$ 行列 $ A$ とスカラー $ a$ に対して、 $ aA$ の行列式は $ A$ の行列式の何倍か。 (こういうクイズをやっている場合か?)

(1) $ 1$ 倍、(2) $ \vert a\vert$ 倍、(4) $ a^n$ 倍、(3) $ a$ 倍、 (5) $ \vert a\vert^n$ 倍。



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Yamagami Shigeru 平成14年12月23日