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“パラドックス”といわれる理由

“パラドックス”とは, どのような意味 なのでしょう? “パラドックス”の意味を辞書で調べてみると, 「逆説」「理に反する言い方 であるが, よく考えてみると一面の 真理を述べている説」と書かれています.
    「バナッハ・タルスキーのパラドックス」は, 体積に 対する素朴な直感に反することから“パラドックス”と呼ばれて いるのです. 「体積」は天与の概念ではなく, 人間が定義したものなのです. 実は, 「バナッハ・タルスキーの パラドックス」における分割に現れる“部品”には体積が 定義できないのです. また, そのあまりに奇抜な内容に, 数学者で さえ, 最初は理解に苦しむことから, まさに“パラドックス”と呼ばれるに ふさわしいように思います.
    「バナッハ・タルスキーのパラドックス」が主張する ことが, 現実には起こり得ないことは, 直感的というより, むしろ 常識的に明らかでしょう. なぜならば, もしも, この定理が主張すること が実際に起こり得るならば, 世の中に存在するありとあらゆる物質を, 次 から次へと増やすことができることになってしまいます$\cdots $ しかし, そんなことが出来るのであれば, もうとっくに(誰かが)実行し ているはずではないでしょうか$\cdots $    そして, そのようなことが 起これば, この世界は人間が住めないほど, 物で埋め尽くされている はずではないでしょうか$\cdots $





Yamagami Shigeru 平成15年2月14日