next up previous
次へ: 逆説的集合 上へ: 分割合同 戻る: 分割合同の定義と性質

分割合同の例

次は, 非常に特殊な分割合同の例であるが, 後で必要となる.

定理 3.2   円周$S^1$と円周から円周上の一点$x$を除いた 部分集合 $S^1\setminus \{x\}$
は, $2$次の回転群$SO_2$に関して 分割合同である.
$\bigl(\ i.e.\ \ S^1
\setminus \{x\}\sim_{SO_2} S^1,\ ^\forall x\in S^1\ \bigr)$

証明
    円周$S^1$を絶対値$1$の複素数全体 $\bigl\{ z\in {\hbox{\ym C}}\ ;\ \left\vert z
\right\vert=1\bigr\}$と同一視しておく.
    いま, $円周上の点xを,\ x=1=e^{i0}\ と考えても一般性を
失わない.$
     $A=\bigl\{ e^{in}\ ;\ n\in \hbox{\ym N}\ \bigr\},
\ B=\bigl(S^1\setminus \{ 1\}\bigr)\setminus A$ とおく.
    このとき, $n \stackrel{1:1}{\longmapsto} e^{in}\ (n\in \hbox{\ym N}\ )$$1:1$の対応となる.

\begin{displaymath}
\left(
\begin{array}{l}
∵)\quad m,n\in \hbox{\ym N}\ \ (...
...浪渉蠅北圭發垢\quad \bigl(背理法\bigr)
\end{array} \right)
\end{displaymath}

    $g=e^{-i}$$A$にかけると
$gA=\bigl\{e^{in}\ ;\ n\in \{0,1,2,\cdots \}\bigr\}=A'\ \ \bigl(
=A\sqcup \{ 1\}\ \bigr)$
    となるので, 定義 % latex2html id marker 2320
$\ref{分割合同}$ より $A\equiv_{SO_2} A'.\ \ また,
\ Bに単位元\ e\ をかけると,$
     $eB=B\ となるので\ B\equiv_{SO_2} B.$
     $以上より,\ S^1\setminus \{ 1\}=A\sqcup B,\ S^1=A'\sqcup B$, かつ $A\equiv_{SO_2} A',B\equiv_{SO_2} B$
    であるので, 定義 % latex2html id marker 2330
$\ref{分割合同}$より $S^1\setminus \{1 \}\sim _{SO_2}S^1\ である.$
        よって, 円周$S^1$と, 円周から円周上の一点$x$を 除いた部分集合とは,
    回転群$SO_2$に関して分割合同であることが示された. $_□$

この定理3.2は, 「バナッハ・タルスキーのパラドックス」の証明の 最後の段階で使う!

注意 3.6   分割合同になるかどうかは, 群の取り方による.

例えば, 閉区間 $X=[0,1]$ と 閉区間 $Y=[0,2]$ とが分割合同であるかどうかを考えてみる. $y=2x\ \ \bigl(x\in X,\ y\in Y\bigr)$ であることから, $G\ni g:x\mapsto ax+b
\quad (a,b\in \textit{\hbox{\ym R}}\ )$という“スケール変換 $\bigl(拡大\cdot 縮小\bigr)$ &平行移動”で表される群$\bigl($いわゆる, $1$次元の ユークリッド変換群$\bigr)$であれば分割合同になる. 一方, 平行 移動だけに限定すれば分割合同にはならないことが知られている.



Yamagami Shigeru 平成15年2月14日