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次に示すのが, 「バナッハ
タルスキーの定理」の証明において,
重要
な概念である分割合同の定義である.
定義 3.1
![$\ \quad B=gA$](img137.png)
となる
![$g\in G$](img138.png)
が存在するとき,
![$AはB$](img139.png)
に
G-合同であるといい,
![$A \equiv _{G}B$](img140.png)
と表す.
![$A_i\equiv_G B_i$](img141.png)
となるように
![$A,B$](img75.png)
を
![$A_{1\ },A_{2\ },\ \cdots \ ,A_{n\ },B_{1\ },B_{2\ },
\ \cdots \ ,B_n$](img142.png)
と
分割できる, すなわち
であるとき,
![$A$](img80.png)
と
![$B$](img81.png)
は
G-分割合同である
といい,
![$\bigl($](img2.png)
または,
![$G$](img16.png)
を省略して
![$A\sim B\ \bigr)$](img147.png)
と表す.
注意 3.1
上で定義された分割合同は, 図形の“周辺部分”を含めて, 重なり
があってはならない. 図形の
“常識的な分割合同”は, 今の場合, 分割合同に
なっていない. なぜなら, 対角線が二重になっているから
である. その意味で,
「バナッハ・タルスキーのパラドックス」の証明
に現れる分割合同は, 厳しい
意味での分割合同になっている.
注意 3.2
定義
![% latex2html id marker 1942
$\ref{分割合同}$](img148.png)
において,
![$X$](img56.png)
がユークリッド
空間
![$\hbox{\ym R}^3$](img38.png)
,
![$G$](img16.png)
が
ユークリッド
空間
![$\hbox{\ym R}^3$](img38.png)
内の運動群
![$M_3$](img50.png)
の場合,
![$G$](img16.png)
-合同
は,いわゆる通常の
![$(図形の)$](img149.png)
合同と
同じである.
半径
の異なる
つの球体が,
常に, ユークリッド空間
内の運動群
について分割合同で
あるという主張が「バナッハ・タルスキーの定理」の正確な内容である。
補題 3.1
“
![$\equiv _{G}$](img150.png)
”は,
![$X$](img56.png)
の部分集合族の上の同値関係である.
証明
![$(1)\ 任意のA\subset X$](img151.png)
について,
![$A$](img80.png)
に
![$G$](img16.png)
の単位元
![$e$](img105.png)
をかけると
![$eA=A$](img152.png)
となる
ので
![$A\equiv _{G}A$](img153.png)
である.
よって, 関係
![$\equiv _{G}$](img150.png)
は反射律を
満たす.
![$(2)\ 任意のA,B\subset X$](img155.png)
につい
て,
![$A \equiv _{G}B$](img140.png)
ならば, ある
![$g\in G$](img138.png)
によって,
![$B=gA$](img156.png)
となる. 両辺に
![$g$](img116.png)
の逆元
![$g^{-1}\in G$](img157.png)
をかけると
![$g^{-1}B=g^{-1}(gA)=(g^{-1}g)A=A$](img158.png)
となるので
![$B\equiv _{G}A$](img159.png)
である.
よって, 関係
![$\equiv _{G}$](img150.png)
は対称律を
満たす.
![$(3)\ 任意のA,B,C\subset X$](img160.png)
について,
![$A\equiv _{G}B
,\ B\equiv _{G}C$](img161.png)
ならば, ある
によって
![$B=gA,\ C=hB$](img163.png)
となる. したがって,
![$C=hB=h(gA)=(hg)A\ \ \bigl(\ g,h\in G\ \bigr)$](img164.png)
となるので
![$A \equiv _{G}B$](img140.png)
である.
よって, 関係
![$\equiv _{G}$](img150.png)
は推移律を
満たす.
補題 3.2
“
![$\sim _{G}$](img165.png)
”は,
![$X$](img56.png)
の部分集合族の上の同値関係である.
証明
![$(1)\ 任意のA\subset X$](img151.png)
について,
![$A=A_1\sqcup A_2\sqcup \cdots \sqcup A_n$](img84.png)
とおく.
各
![$A_i\ \ \bigl(\ i=1,2,\cdots ,n\ \bigr)$](img166.png)
に群
![$G$](img16.png)
における単位元
![$e$](img105.png)
をかけると,
すべての
![$i\ \bigl(=1,2,\cdots ,n\ \bigr)$](img167.png)
につい
て
![$eA_i=A_i$](img168.png)
となるので
と表すことができる. したがっ
て,
![$A\sim _{G}A$](img170.png)
であることは明らか.
よって, 関係
![$\sim _{G}$](img165.png)
は反射律を満たす.
![$(2)\ 任意のA,B\subset X$](img155.png)
に
ついて,
![$A\sim _{G}B$](img146.png)
であるならば,
となる.
![$B_i =g_iA_i$](img171.png)
の両辺に
![$g_i$](img172.png)
の逆元
![$g_i^{-1}\in G$](img173.png)
をかけると
となる. したがって,
となるので
![$B\sim _{G}A$](img177.png)
である.
よって, 関係
![$\sim _{G}$](img165.png)
は対称律を満たす.
![$(3)\ 任意のA,B,C\subset X$](img160.png)
について,
![$A\sim _{G}B,
B\sim _{G}C$](img178.png)
ならば
![$A\sim _{G}C$](img179.png)
を
示す. まず,
![$A\sim _{G}B$](img146.png)
なので
と表すことができる. また,
![$B\sim _{G}C$](img183.png)
なので
と表すことができる.
![$A_{ij}=g_i^{-1}(B_i\cap B'_j)$](img186.png)
と
おけば, 両辺に
![$g_i\in G$](img187.png)
をかけることによって
となる. また,
![$C_{ij}=h_j(B_i\cap B'_j)$](img189.png)
とおけば
であるので
となる. したがって,
![$A\sim _{G}C$](img179.png)
である.
よって, 関係
![$\sim _{G}$](img165.png)
は推移律を満たす.
定義 3.2
![$G$](img16.png)
-空間
![$X$](img56.png)
の部分集合
![$A,B$](img75.png)
に対して,
![$A$](img80.png)
が
![$B$](img81.png)
のある部分集合と
![$G$](img16.png)
-分割合同であるとき,
![$A\preceq_{G}B$](img192.png)
と表す.
![$\bigl($](img2.png)
つまり,
![$A \preceq_{G} B
\ \stackrel{\mathrm{def}}{\Longleftrightarrow}\ A \sim_{G}B'$](img193.png)
となる
![$B' \subset B$](img194.png)
が存在する.
注意 3.3
明らかに,
![$A\subset B$](img195.png)
ならば
![$A\preceq_{G}B$](img192.png)
である.
注意 3.4
![$\preceq $](img64.png)
は, 半順序関係である.
補題 3.3
分割合同に関して, 次の2つの性質が成り立つ.
であるとき, 全単射
で, 任意の
に対し
て,
が成り立つような
ものが存在する.
-
.
証明
(i)
-分割合同であることより,
を
それぞれ,
と分割して,
とできる. そこで, 全
単射
を
に
よって定める.
に対し,
と分割でき,
となるので,
となる. よって,
である.
(ii) 明らかである.
定理 3.1
ベルンシュタインの定理
![$G$](img16.png)
を集合
![$X$](img56.png)
に作用する群とし,
![$A,B \subseteq X$](img216.png)
と
する. このとき,
が成り立つ.
証明
分割合同の性質
i
,
ii
を使う.
かつ
より,
かつ
,
かつ
であるような
が存在する. そこで,
で補題6.1
i
の性質をもつものがある.
とし,
と定め,
とおく。
であるから、補題6.1(i)の性質より、
である。
次に、
すなわち,
が
成立する.
よって, 補題6.1(i)の性質より
.
最後に、補題6.1
ii
を使って、
となる。
注意 3.5
“ベルンシュタインの定理”というと, 一般的には次のものをいう.
「 集合
![$A,B$](img75.png)
について,
![$A$](img80.png)
から
![$B$](img81.png)
への
単射および
![$B$](img81.png)
から
![$A$](img80.png)
への単射がともに存在すれば,
![$A$](img80.png)
と
![$B$](img81.png)
は
濃度が等しい 」
定理
![% latex2html id marker 2282
$\ref{ベルンシュタインの定理}$](img235.png)
で
![$G$](img16.png)
の作用を「自明」な
ものとして取れば, 通常のベルンシュタインの定理に帰着する. この
意味で, 定理
![% latex2html id marker 2286
$\ref{ベルンシュタインの定理}$](img236.png)
はベルンシュタインの定理
の拡張になっている.
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Yamagami Shigeru
平成15年2月14日