 
 
 
 
 
   
「バナッハ・タルスキーのパラドックス」を証明する上で必要と
    なる, 集合論の知識をあげておく.
    
    
  二項関係とは 
         集合 に対する直積集合
に対する直積集合 の各元
の各元 について,
    “満たすか満たさ
について,
    “満たすか満たさ
     ないか”が判定できるような規則
 を, 集合
    を, 集合 上の二項関係という.
上の二項関係という.
         対 が二項関係
 が二項関係
 を満たすことを
を満たすことを
     
 と表す.
 と表す.
   
    同値関係とは 
     次の つの性質を同時に満足する集合
つの性質を同時に満足する集合 上の二項関係
上の二項関係 を
    同値関係という.
を
    同値関係という.
    
                    任意の に対して
に対して
   
 
半順序関係とは 
     次の つの性質を同時に満足する集合
つの性質を同時に満足する集合 上の二項関係
上の二項関係 を
    半順序関係と
を
    半順序関係と
     いう.
   
 任意の
  任意の に対して,
に対して,   
                 反射律
反射律 
 
   かつ
 かつ  なら
    ば,
 なら
    ば,   
          反対称律
反対称律 
 
   かつ
 かつ  なら
    ば,
 なら
    ば,   
            推移律
推移律 
直和とは
 
 つの集合
つの集合 の和
の和
 には,
     一般に, 共通部分
には,
     一般に, 共通部分 が
が
 がない場合は, 特に,
がない場合は, 特に,  がある場合と
    区別して,
がある場合と
    区別して,  を
を
 と表し,
 と表し,  と
と の直和という.
の直和という.
     
 
 
 を, どの
を, どの つをとっても共通部分がない部分集合
つをとっても共通部分がない部分集合
    
 
 であるとき,
 であるとき,
 は部分集合の集まり
は部分集合の集まり
 に分割できるという.
に分割できるという.
 
 に同値関係
に同値関係 が与えられたとき,
が与えられたとき,   に
    対して,
に
    対して,
 の部分集合
の部分集合
    
 の同値類という.
の同値類という.
 の同値関係
の同値関係 による
    商集合といい,
による
    商集合といい,   
 に属する各元を
に属する各元を の代表という.
の代表という.
選択公理(ツェルメロ)
     集合 が, 空でない部分集合の族に分割されているとする.
    このとき, 各部
が, 空でない部分集合の族に分割されているとする.
    このとき, 各部
     分集合から一つずつ要素を選び出して, それらを集めることにより,
    一つの
     集合を作ることができる.
    
        これは, 選択公理と呼ばれるもので, 非常に便利なの
    だが, この公理の妥当
    性に関しては種々の議論がある. しかし, 数学的に
    重要な数々の定理の証明に
    この公理を用いる. 一方で, この公理を仮定したが
    ために, 直観的には自然で
    ないような定理も得られてしまう.
     「バナッハ・タルスキーのパラドックス」
    もそのような定理の一つといえる.
    
    
        「バナッハ・タルスキーのパラドックス」の
    証明において, 選択公理は必要不可欠であるので, 選択公理
    について, もう少しだけ説明しておくことにする.
    
        同値関係によって作られる同値類
    とは, 簡単に言うと, 同じ性質を
    持つもの同士のグループのことである. そして, これによって現れる
    グループの全体を
 商集合と呼ぶので
    ある. また, 各グループの代表を集めたものを代表系
商集合と呼ぶので
    ある. また, 各グループの代表を集めたものを代表系
     または選択集合
または選択集合 と呼ぶ.
と呼ぶ.
        「どのようなグループ分け 同値関係による商集合
同値関係による商集合 に
    対しても, 必ず
    代表系を選び出すことができる」ということを主張しているのが
    選択公理である. これは直観的に明らかに
    見えるのだが, なかなか奥が
    深い. 一例として, 非可測集合の存在があげられる.
に
    対しても, 必ず
    代表系を選び出すことができる」ということを主張しているのが
    選択公理である. これは直観的に明らかに
    見えるのだが, なかなか奥が
    深い. 一例として, 非可測集合の存在があげられる.
        実数全体
 に
に を
を
   
 が有理数
 が有理数
   
 を与えられた
    実数だけずらしたものに
    なっていて, そのグループ分けは直観的に
    把握できるような類いのものでは
    ない. この場合の代表系は“具体的に”構成するのは
    難しい
を与えられた
    実数だけずらしたものに
    なっていて, そのグループ分けは直観的に
    把握できるような類いのものでは
    ない. この場合の代表系は“具体的に”構成するのは
    難しい というより, 実
    はできない
というより, 実
    はできない . にもかかわらず, 選択公理を仮定する
    ということは, その
    存在を認めることに他ならず, 必ずしも明らかなこととは
    なっていないのである.
. にもかかわらず, 選択公理を仮定する
    ということは, その
    存在を認めることに他ならず, 必ずしも明らかなこととは
    なっていないのである.