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定理 6.2
3次の回転群
は逆説的群である. すなわち,
の自分自身
への左作用は逆説的である.
証明
2つの生成元 によって生成される
自由群をとする.
自由群の単位元を , の単位元をとする.
とおく. は, それぞれ軸のまわりの回転, 軸のまわりの回転である.
を, 準同型写像
として定めることが出来る.
が1対1であることが
わかれば, は
と同型な
部分群を含むので,系6.1.2により逆説的である.
そこで,
が
単射かどうかが問題である.
のとき, を示せばが
単射であることがわかる.
整数を成分とする行列の積の成分は,再び整数であるので,
長さの語word に対して
と書き表せる.
をいうためには, がで割り切れない
ことを示せば十分である.
文字数がの で終わる被約語を考える.
がで割り切れない
ことを帰納法で示す.
これは, がで割り切れないことを表す.
- k 2のとき
まで, がで割り切れないとすると,
が文字数の被約語
であるとき
となる.
を文字数の被約語とすると, は
で表され, これは次のように場合分けされる.
(1)の場合
(2)の場合
(3)の場合
(4)の場合
よって, すべてのについて, がで割り切れない
ことが確かめられた.
また, で終わる被約語()の場合も
同様のことが言える.
は同型写像であるから, の部分群は
自由群と同型である.
Yamagami Shigeru
平成15年2月14日